2008年11月27日木曜日

8.短命の時代と長寿社会

明治時代中期まで、日本人の平均寿命は30歳代の半ばだったといいます。昔から幼年期を乗り越えたら、そのくらいまで生きられたのです。大正時代になってようやく平均寿命は延び、40歳代の前半になったそうです。そして、戦後になって初めて60歳代まで伸びました。それがいまや80歳を超えているのです。
現在でもアフリカや東南アジアの一部には、平均寿命が30歳という国もあるようです。人類の歴史から見ると、今の日本人は異常な長命であることが分かります。人類何百万年の歴史の中で、この数十年の日本は驚異的な長寿社会を迎えているのです。だから、今までと同じサイクルで人生を見つめることはできません。短命の時代にはそれなりの人生観というか、生き方がありました。長生きしても30歳くらいで死ぬという時代が、ずうっと続いてきたのです。
それがいまや、短命の時代の2倍も3倍も長生きするようになりました。ずうっと続いてきた短命の時代の人生観や価値観では、今の長寿社会の問題点を説明することが難しくなってきています。たとえば、短命の時代には長生きした人のことを、「長老」と呼んで尊敬していました。長生きする人は稀だったし、そのような人は人生経験が豊富だったから相談相手として敬われたのだと思います。
現在のように長生きする人が増えてくると、「長老」とは呼ばれなくなりました。当たり前です。長寿が珍しいから尊敬を集めたのであって、珍しくなくなれば誰も相手にはしません。老人ホームに送られたり、独居の年寄が激増中です。年寄を見る目は、昔とは違ってきているのです。
昔も今も人生という意味では同じでしょうが、寿命すなわち時間という物理的要素が決定的に違ってきているのです。この物理的要素が違ってくることによって、人生に対する精神的価値観も大きく変化してきました。
短命の時代と長寿社会。連続した歴史の中で、この数十年の変化は日本の国を根底から変質させてしまうくらいインパクトの大きいものだと思うのです。

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